映画『ノッティングヒルの恋人』で使われた「She」などで、エルビス・コステロに興味をもった人も多いのではないでしょうか。
こんにちは。まねきネコです。
私も音楽が好きで、10代の頃から新旧問わずいろいろな音楽を聴いているのですが、じつは、その中でも、いちばん好きなミュージシャンが、コステロです。
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彼は本当に多作で、いろいろなレコードを出しているので、おすすめのアルバムを選びだすのは本当に悩ましい(笑)作業なのですが…
コステロに興味のある人には、いちどは、このアルバムを聴いてほしい!
私のオール・タイム・ベスト3を、ご紹介します!
第3位 – This Year’s Model(ディス・イヤーズ・モデル)
My Aim is True(マイ・エイム・イズ・トゥルー)に続き、1979年に発表されたセカンド・アルバム。
2003年には、ローリング・ストーン誌が選ぶ「最も偉大な500のアルバム」の98位に選ばれました。
コステロと長い付き合いとなるバックバンド「ジ・アトラクションズ」(ドラムのピート・トーマス、キーボードのスティーヴ・ナイーヴ、ベースのブルース・トーマス)が結成されたのも、このアルバムのレコーディングのときです。
もっとも「エルビス・コステロらしい」名盤
このアルバム、もっとも「コステロらしい」アルバムだと思います。
かつて、コステロは、音楽雑誌Rockin’onのインタビューで、
「世間は俺のことを「いつも怒っている人」みたいに思っていて、そのように振るまうことを期待しているみたいだけど、そのイメージに付きあうのは、いいかげんウンザリだ」
…みたいなことを語っていました。
そんな世間からのパブリックイメージ(?)が定着しはじめたのが、もしかしたら、この「This Year’s Model」あたりからかも。
たしかに、一曲目の「No Action」からしてアップテンポなナンバーだし、やたらと社会にも(自分に対しても?)批判的な歌詞が多いし。
「怒れるパンク・ロッカーが作ったアルバム」と解釈されてしまうのも、まあ、分からなくはありません。
ただ、パンク・ムーブメントの文脈だけでこのアルバムをとらえてしまうと、ちょっともったいないと思います。
ていねいに作りこまれた「リフ」に注目!
なによりもこのアルバムの大きな魅力は、それぞれの曲のリフが丹念に作りこまれていること。
考え抜いて、ていねいに作られた曲が多い。
洗練されたリフが土台にあるから、ギター・ベース・ドラム・キーボードという限りなくシンプルな編成なのに、どの曲も、どっしりとした存在感がある。
少なくとも、同時代のパンク・チューンとは一線を画していると思います。
たぶん、コステロは、「表面的な文脈としては」パンクと見せかけつつ、もっと複雑なコンセプトのポップ・ミュージック・アルバムを作ろうとしたんじゃないかな、と。
あと、編曲(アレンジ)も重層的です。
Amazonのレビューでも触れられていない点ですが、例えば、このアルバムに収録されている楽曲群ではオルガンがとても効果的に使われている。
「Punp It Up」のように、ギターよりもオルガンが主導してリフのパートを演奏している曲も多い。
メンバーとして加わったばかりのスティーブ・ナイーブの貢献が大きいことは明らかです。
スティーブ、グッジョブ!
とくにこの曲がおススメ!
This Year’s Girl
彼女が世間の話題にのぼるのをおまえたちは今も願っている
あの娘は今年のスーパー・モデル
彼女が唖然とした顔で堕ちてゆく姿を見たがっている
あの娘は今年のスーパーモデル(「エルビスコステロ詩集」より)
売れっ子になったのにあっという間に忘れ去られてしまうスーパーモデルを喩(たと)えに、いきすぎた商業主義の風潮を遠回しに皮肉っています。
コステロらしいアプローチですね。
(I Don’t Want To Go To) Chelsea
イントロのドラムがすばらしい!グルーヴしてます!
ちなみに、初期のアメリカ版にはこの曲が含まれていなかったらしい…なぜ?
Radio, Radio
第2位 – Painted From Memory(ペインテッド・フロム・メモリー)
カーペンターズなどへの楽曲提供で知られる作曲家、バート・バカラックとのコラボレーションで生まれたアルバム。
コステロは「コラボレーション」の天才!?
コステロの魅力のひとつとして、「さまざまなジャンルの一流ミュージシャンとコラボし、私たちにいろいろな音楽の世界を教えてくれる」キュレーター的な存在であることが挙げられます。
カントリー、ジャズ、R&Bなど、本当に幅広い。
「Painted From Memory」は、そんな彼のコラボレーションワークのひとつの集大成といってもよいでしょう。
楽曲のメロディや構成は、さすがバカラック!のハイ・クオリティ。
バート・バカラックは稀代のメロディ・メーカーですが、コステロとの今回のコラボ楽曲群は、さらに不思議な高みに達しています。
一流ミュージシャンがレコーディングに参加
レコーディングに参加しているミュージシャンの顔ぶれも豪華。
ジョン・レノンやエリック・クラプトンのレコーディングへの参加で知られるドラマーのジム・ケルトナー、マイケル・ジャクソンやビリー・ジョエルなど多くのミュージシャンのセッションに参加しているギタリストのディーン・パークス、ウッディ・ハーマン・オーケストラなどで活躍したトランペットのゲーリー・グラントなどなど。
そもそもバカラックは、「洗練されたポップ・ミュージック」を探求してきた作曲家であり、超一流ミュージシャンばかりを起用することで知られていますが、今回のアルバムも例外ではありません。
それぞれの楽器が奏でる音が、ピアノ線のように細くて、繊細。
良い意味で、緊張感がすごい。
まあ、とにかく、こんなにぜいたくで「美しい」アルバム、なかなか出会えません…。
とくにこの曲がおススメ!
Toledo
私のオール・タイム・ベスト10曲にまちがいなく入る1曲です!
メロディ、構成、アレンジ。どれをとっても私にとってはカンペキ…
コステロのボーカルに女性コーラスが重なるサビのくだりとか、本当に美しいです。
God Give Me Strength
Painted From Memory
第1位 – Imperial Bedroom(インペリアル・ベッドルーム)
1982年に発表されたアルバム。
プロデューサーは、ビートルズの『リボルバー』『サージェント・ペパーズ』などのエンジニアリングで知られるジェフ・エメリック。
「This Year’s Model」(前出)と同様、 ローリング・ストーン誌の「最も偉大な500のアルバム」で166位に選ばれました。
アルバム・ジャケットは、英国の著名なグラフィック・デザイナーバーニー・バブルスによるもので、パブロ・ピカソの3人の音楽家をもじったものと言われています。
ジャンルを超越するコステロ・ミュージック
さて、アルバム発売当時、そのクオリティに驚いたメディアが「ジョージ・ガーシュインの再来だ!」と騒ぎ立ててコステロ本人は辟易(へきえき)したという話をインタビューで読みましたが…あながち、メディアが騒ぎすぎとは思いません。
コステロ本人も「宝石箱のようなアルバム」と表現しているとおり、本当に色とりどりの豊かな「音楽」がつまっているアルバムだからです。
コステロは、前作の「Trust」から、ギターではなくピアノを使った作曲スタイルを試みはじめました。
そのアプローチが、このアルバムの楽曲にも間違いなく影響しています。
ひとことで言うと、コステロが手がける音楽の幅がいっきに広がって、「ジャンル」を超越してしまった。
「この曲のジャンルはどちらかと言うとジャズで…」なんて話なんかどうてもよくなって、コステロ「の」音楽という小宇宙を作り上げているんですね。
例えば、ジャズ・トランぺッター/ボーカリストのチェット・ベイカーに提供した楽曲「Almost Blue」。
どちらかというと「ジャズ・バラード」というジャンルに分類されるコード進行とアレンジで、それまでのコステロの作品には見られなかったものです。
そんな曲が、激しい8ビートで終わる「Man Out of Time」の直後に配置されていたりするわけですが、まったく違和感がない。
ちなみに、「Man Out of Time」の前のトラック「The Long Honeymoon」は、強いて言うなら「ボサノバ」です(笑)
このような楽曲群が、不思議なバランスで同居してしまっているのが、このアルバムのすごいところ。
ちなみに、このアルバムを、私がおススメ第1位に挙げた理由は。
アルバムとしてのクオリティが高いのはもちろんなのですが、なによりも、「Beyond Belief」が入っているから。
「Beyond Belief」は、コステロの作品の中でも、私がいちばん好きな曲。
…ということは、私がこの世の中でいちばん好きな曲ということに!?
とくにこの曲がおススメ!
Beyond Belief
カリフォルニアの断層なんかジュネーヴ一深い地下室に押し込んでしまえばいいんだ
火星の運河や、グレイト・バリア・リーフもさ
きみにむかうこの想いは我ながら想像を絶するね
(「エルビスコステロ詩集」より)
8ビートを叩き続けるドラムと、間をねり進むようなベースラインのコンビが生み出す激しいグルーブと、淡々(たんたん)とクールに歌い上げるコステロのボーカル。
このコントラストが、オーケストレーションとして、ものすごく洗練されている。
この曲を、唯一無二のモダンなナンバーに仕上げているのですよね。
コステロは、Beyond Beliefを最近のライブでもちょくちょく演奏していて、私も生(なま)で聞いたこともありますが、このスタジオレコーディングを超えた演奏には、いまだにめぐり合えていません。
ちなみに、コステロの自伝「Unfaithful Music & Disappearing Ink」によると、ドラムのピート・トーマスが二日酔いでスタジオに来れなかったので、メトロノームを使って他のメンバーのパートを先に録音。
そうこうするうちにピートが現れ、この曲の怒涛のようなドラム・パートを演奏したとか。
Man Out of Time
Almost Blue
非業の死をとげたジャズ・トランぺッター、チェット・ベイカーに提供した曲です。
チェット・ベイカーが歌う「Almost Blue」はこちら。
最後に
この記事では、コステロのおすすめアルバムのベスト3選をご紹介しました。
実際のところ、3つだけを選ぶのは、けっこう苦労しました…
コステロは数多くの「名盤」といえる良質なレコードを出しているので、「あれもいいな」「これもいいな」となってしまって、とくに2位、3位を決めるのがすごく迷うのですよね…
あなたのお気に入りのアルバムができたら、ぜひ、教えてください!